ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「メロン頂いたんです♪ よく冷やしてあるので食べましょ♪」
翌朝、なぜか伶菜は
朝食を食べ終わった俺の前に
メロンが載せられた皿をすっと差し出した。
一口で食べられるようにカットされているメロンを見て、俺は福本さんが言っていたことを思い出した。
メロンアレルギーがあるかもしれないのに
なんでここにメロンがあるんだ?
なんでこのタイミングなんだ?
『・・・どうしたんだ?コレ。』
果汁が浮き上がっているぐらい熟していて絶対に美味しいであろうメロンなのにそれをじっと睨んだ俺。
事情を知らないであろう彼女は
”なんでそんなに睨んでいるの?” と言わんばかりの苦笑いをしてみせた。
「入江さんが送って下さったんです。」
『あの人はどういう風の吹き回しなんだろうな?』
このタイミングで送ってくるなんて・・と勝手にイラつきを覚えた。
入江さんは善意で送ってくれたとは思ったが。
「あの、だから、お礼の電話をかけたら、同僚の高島さんの実家で採れたメロンだって。果物屋さんでも取り扱っているブランドメロンらしいの。」
入江さんが俺にこれ以上悪く言われないようにするためなのか
一所懸命に説明をした伶菜。
彼女も入江さんも
俺が彼女のアレルギー症状の有無を気にしていることなんか知らないから
イライラしていちゃいけないよな・・・
そう思った瞬間。
久しぶりに耳に滑り込んできた一人の女性の名前のおかげで
俺はなんとかイラつきを静められた。
『へえ~高島さんちの・・か。』
高島さん・・・入江さんの教え子であり今は高校数学教師の後輩
他人を自分の中へ簡単には踏み込ませようとはしない入江さんに遠慮なくぶつかっていくその人
そんな高島さんにイジられている入江さんの狼狽ぶりを密かに思い浮かべ、相変わらずなのかな?とクスっと鼻先で笑ってしまった俺。
俺の様子の変化に安心したのか伶菜もやわらかく笑った。
そして
「そうだ!!!!!」
伶菜は突然立ち上がり、冷蔵庫のほうへスタスタとスリッパの音をたてながら歩いて行ってしまった。
俺は彼女が今度は何をし始めるのか気になって仕方がない。
だから目の前にあるメロンにはまだ手を伸ばさずに彼女の様子を覗き込んだ。