ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



「奥野さん、もしかして知り合い?」

「知り合いも何も・・伶菜ちゃん・・」


思わず口に手をあて息を呑んだ。
その人も私を指差し、口を大きく開けた。
お互いに驚きを隠せない。


奥野先生?!
なんでここにいるの?
ウチの病院の姉妹病院である名古屋城北総合病院で従事しているはずなんじゃ


「奥野さん、ゴメン・・・・多分、日詠さんと話したいんだ思うけど、先に彼女の内診をさせてもらってもいいかしら?」

椿本先生の診察待ちの妊婦さんがたくさんいることは待合室にいてよくわかっていたので、椿本先生の申し出をすぐに受け入れた。

奥野先生も “それじゃ、また” と言い、私達の前から立ち去った。
私も彼女もお互いに
単なる顔見知り程度の関係のようなやりとりで終わってしまった。



私とナオフミさんの気持ちがすれ違ってしまったあの夜
彼とキスした奥野先生

その後、初めて面と向かって彼女に会ったのが今日

どんな言葉を交わせばいいのか
どんな顔で向き合えばいいのか
わからなかった

だからこれでよかったんだ

椿本先生の内診を受けている間、ずっとそんなことを自分に言い聞かせていた。


「コレ、エコー写真。」

『これ・・・』

「妊娠8週ね。悪阻(つわり)は?」

『今のところないですが、体のダルさは感じます。』

内診を終えた私は診察室に戻り、エコー写真を見せてもらいながら椿本先生から説明を受けていた。
渡されたエコー写真は祐希を妊娠した頃のものと比べると、すごく鮮明な画像だった。



「とりあえず、大事な時期だから無理しないでね。仕事しているみたいだし。」

『ハイ。』

「次の診察は・・・・あっ、そういえば奥野さんがあなたと話をさせて欲しいって言ってたけれど、今からいいかしら?」

椿本先生は受話器を手にしたまま私に問いかける。
突然のことでゆっくり考える余裕もなくてハイと応えるしかなかった。

しばらくしてどうやら内線電話で椿本先生に呼ばれた奥野先生が
再び診察室へやって来た。


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