ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



そう決めた私は彼女に対しゆっくりと頷いてみせた。


「あの夜、別の用事で南桜病院に来ていたんだけど・・・・・そんな中、いつもと様子が違う日詠クンが来たの。でも、そんな彼の様子を見て、すぐにわかった。」

『・・・・・・』

「伶菜ちゃんと何かあったんだって。大学生の頃、あてもないのにアナタを探し続けている彼の表情とシンクロしたから。」

『・・・・・・』


職業柄なのか、この時も私は彼女の話が途切れるまでじっくり耳を傾けることを心がけた。


「彼女がすぐ傍にいるのになんでそんな顔してるのよって思った。それと同時に大学生の頃から抑えていた彼に対するスキという気持ちがまた膨れ上がりそうな気がしたの。だから、キスした・・・彼にはっきりと拒絶されるために・・・・・私じゃ駄目だとちゃんと感じ取るために。」

『拒絶されるために・・・』


彼女の言葉をオウム返しした。
それはアナタの話、ちゃんと聴いていますという合図。
そんなこともしているぐらい
この時の私は意外と冷静だったと思う。

彼女が“抑えていた彼に対するスキという気持ちが膨れ上がりそうな気がした”とハッキリ口にしても
拒絶され自分じゃ駄目だと感じ取るためにキスしたと
私の中ではあり得ないであろうその行動の理由を聞かされても
私は冷静だった。

学生時代からずっとナオフミさんと共にお互いの能力を認め合ってきた彼女だから
何があってもおかしくない・・・・そう思っていたから。

でも

「こんなやり方、間違ってるよね?ゴメン。でもね、彼は大学生の頃と変わらずブレていなかった。彼のアナタへの想いをこれでもかっていうほど思い知らされた。」

彼の心の中に居続ける人にはやっぱり敵わないという彼女の想い。
自分の同じような想いが彼女の心の中でも存在していたことに驚きを感じ
冷静に彼女を見つめていたはずの自分が揺らぎ始めた。


「ひどいことをしたと思ってる。許してもらおうなんて思っていない。アナタに対して許されないことをしたという罪悪感を抱き続けることが、今、私にできる唯一のことだと思ってる。」


私だって
彼女がナオフミさんのことをスキなのはずっと前からわかってた
その気持ちを表出しようとしない彼女を脅威に思ったことだってある

彼女が本気で彼にそれを表したらどうなるんだろう・・・とも
もし、それが起こったら、自分よりも彼女のほうが彼にふさわしい・・・とも


でも彼女は彼のことを大切に想うと同じぐらい
私のことを大事に想ってくれていた
そんな彼女に私も支えられていた

それもまぎれもない事実
気持ちを表出することをずっと抑えていた彼女が打ち明けてくれた今
許す許さないという次元で物事を考えちゃいけない

私も自分の想いを正直に伝えるべき
・・・そう思った。



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