ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
じゃあ何でここに来たの?
多分、そう聞きたいんだと思う
でもそれを聞いてこない彼女の気遣いのせいで
自分から打ち明けなきゃ・・・そう思った。
『ここに来たのは、彼に・・・ナオフミさんには主治医という立場ではなく、お腹の子供の父親という立場のままでいて欲しいから。』
また、目を閉じてしまった奥野先生だったけれど
首を繰り返し小さく縦に振った。
「そうね。祐希クンを妊娠している時、伶菜ちゃんも日詠クンも・・・・いろいろ大変だったものね。」
祐希を妊娠している時、私とナオフミさんの一番近くで見守ってくれていた人も彼女だった。
彼が主治医を辞めた時のあの辛かった記憶を閉じ込めたままでいたい・・・・私のそういう想いもよくわかってくれていると思った。
でも、それだけじゃない
『ドクターとしてではなく、子供が生まれてくるのを楽しみに待つ父親の気分を色々と難しく考え込むことなく味わって欲しい。』
こういう想いも私の中にはあって、それも素直に伝えようと思った。
奥野先生はまた首を縦に振る。
そしてようやく目を開けて私を見てくれた。
「わかったわ。私でもよければ、喜んで主治医を引き受けるわね。」
『また、どうかお願いします。』
彼に大切なキスはひとつだけと気付かせてくれるようなキスをした彼女を
妊娠したと聞かされて、敵対心ひとつ見せることなく、安心したと言ってくれた彼女を
信じてみようと思った。
だから今度こそ私は自分で主治医を選んだ。
以前からずっと自分のことを理解してくれていて
今の自分に必要な人を。
そしてその人はこの時もやっぱり私のことを見透かしていた。
「あたしがこんなこと言える立場じゃないってわかってるけど言わせて。」
『・・・ハイ。』
「父親の気持ちを味わわせてあげたいのなら・・・妊娠したこと、ちゃんと日詠クンに言おう。」