ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
またいつもと違うことに気が向いてしまった俺は
もう夏の終わりを告げるようなほんの少し冷ややかな風で揺れている彼女の髪を右手で除けながら彼女の頬にそっと触れた。
『やっぱり顔色、悪い。』
「・・・・・」
何も言わず、またふんわりと笑った彼女。
この時の俺もその笑った顔に違和感を覚えた。
悪い違和感ではなく
自分の知らない彼女を感じた・・・そんな違和感を。
『いつもと違う。』
「そうかな?でも・・・」
彼女が何か言おうとしているのに気がつき、彼女の頬に触れていた自分の右手を離した。
再び違和感のある笑顔を見せた後、彼女は俺の耳元に口を寄せた。
「・・・・・・・・・・・」
『聞こえないぞ。』
こんな時まで急かしてしまったせいか
耳元にあったはずの彼女のかすかな息遣いが遠のいてしまった。
ふと彼女の姿を追うと
そこには目を閉じ、ゆっくりと頷く彼女がいた。
何かを決心したように見えたその姿によってもたらされた緊張感。
さっきも感じた違和感までもそこに被さってきて。
俺の耳元に再び近づいてきた彼女のかすかな息遣いに
俺も息を呑んだ。
「だから・・・妊娠したの。」
『・・・?!』
心のどこかでその可能性も考えていた
そうだったらいい・・とも
でも体調が優れない様子の彼女が
いつもと変わらないペースで過ごしている状況に
無理するなよ・・と気にかけることのほうが
俺の中で多くの比重を占めていた
そして今、本人から予測していたことを伝えられて
やっぱりそうだったんだな・・・と思いながらも、
新しい命の存在がまだ実感できなくて
つい彼女の頭のてっぺんから足の先まで舐めるように見つめた。
お互いにベンチに座っていたせいで彼女のお腹辺りの変化はわからなくて、そこを二度見してしまった。
「まだ、お腹は出てないから・・・」
俺にじっと見つめられてくすぐったく思ったのか
彼女は説得するようにそう言った。