ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活




血の繋がりがないことに気がつかないまま、伶菜の両親に大切に育てられていた7才だった自分


“母さんのお腹の中に赤ちゃんがいるんだよ。尚史の妹だ!!!!”

俺の頭をガシガシと乱暴にさすりながら、“だから母さんのことも今まで以上に優しく守っていってくれな” と嬉しそうに笑った育ての父
“弟かもしれないわよ~” と彼女独特の人に安心感を与える笑顔でお腹を撫でた育ての母


目を凝らしてもお袋の腹の膨らみがわからず、赤ちゃんの存在が今ひとつピンとこなかった
けれど、自分にも妹か弟ができるかもしれないということは嬉しかった
学校の友達の多くは兄弟がいて羨ましかったから

今ひとつピンと来なかった赤ちゃんの存在だったけれど、お袋の腹の膨らみが大きくなっていくのを見守るうちに兄になる自覚も少しずつ育っていった


親父と一緒におそるおそるお袋の腹に手を充てて赤ん坊の胎動に始めて触れた時は
びっくりして手が震えたっけな
親父に促されて彼の聴診器をお袋の腹に充てて腹の中の音を聞いたりもした

大きくなったお袋の腹の表面から赤ん坊の足のような浮き上がりが見えた時は
“すごいキック力だな。兄弟けんかで負けないように尚史も鍛えておけよ。”
と親父と大笑いもしたしな


自分が診察している妊婦さんからは上の子が赤ちゃん返りして困っているとよく耳にするけれど、ずっと兄弟が欲しかった俺は赤ん坊に親が取られるような気持ちよりも兄弟ができる嬉しさのほうが勝っていて

お袋の妊娠生活を親父と一緒に楽しんでいた記憶しかない
大切で今でも自分にはなくてはならない幸せの記憶・・・・だ



その記憶を
伶菜や祐希にも少しずつでもいいから伝えてやりたい
そんなことも思った。


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