ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「既にお父さんの方も、これからお父さんになる方も・・・お母さんを支えるのはお父さんなんです。どんなに仕事が忙しくてお母さんを手伝うことができなくても、労いの言葉ひとつでも支えられるものらしいですよ。」
伶菜と一緒に参加した両親学級。
土曜日であったせいか、多くの夫婦が参加していた。
彼女とこういう場に参加したのは初めて。
目の前に座っている夫婦が講義を聞きながら手を繋ぎ、指を絶えず絡めていた。
見てしまったこっちが申し訳なく思う。
奥野さんの講義を一所懸命に聞き入っていた彼女はそれにおそらく気がついていない。
もし、今、俺が目の前に夫婦みたいに彼女の手を取ったら
どんな反応するんだろうな・・・と他事を考えていたその時
「そこの背の高いお父さん。今は奥さんを気にしてばかりではなく、講義を聞いて下さいね!
と奥野さんに注意された。
それだけでなく
「それでは、陣痛が続いている時のお父さんができるサポートを実演してみましょう。それじゃ、さっきのお父さん、こちらへ!」
実演の指名までも。
確かに他事を考えていたのはいいことではなかったけれど
指名することはないだろうと軽く奥野さんを睨んだ時、
「頑張って!ナオフミさん♪」
『あっ、ああ。』
両手で軽く拳を握って嬉しそうに他人に聞こえないぐらいの小さな声援を送ってくれた伶菜に奥野さんに対する反抗心をあっさりと抜き取られた。
「じゃあ、私の言うとおりにやってみて下さいね。」
『・・・ハイ。』
「あら、素敵な返事。」
『・・・・・・』
伶菜の前では反抗するとかできやしない
心配かけたり誤解させたりしたくないしな
俺は奥野さんの指示を待つことなく、自分から人体模型の前に移動した。
「お父さん、読みが鋭いわね。今から陣痛時にお母さんの痛みを少しでも和らげるようなマッサージをお伝えしようと思ってたとこなんですよ。じゃあ、やってみましょうか。」
俺はかりてきた猫状態で小さく頷き、奥野さんに言われるがまま人体模型の腰をさすってやった。