ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
伶菜の体に何かあったのか?
それとも
胎児の体に何か見つかったのか?
もし何かあったら
伶菜にどう伝えればいいんだ?
もし命に関わることでもあったとしたら、俺
情けないけれど何も考えられない
いや、命に関わるとか
考えたくない
「伶菜ちゃんもお腹の中のベビちゃんも順調よ・・って日詠クン?」
『・・・よかった・・・・』
全身の力が誰かの手によって抜き取られたような感覚を覚えた。
“家族だから伝える” という言葉だけだったのに
冷静でいられない自分がいた。
いや
家族だから
冷静でいられないんだろうか?
地に足がついてないのが
自分でもわかったけれど
どうしたら地に足がつくのかがわからない
こんな俺が
医師という立場でいてもいいのだろうか?
「ドクターだって人間よ。」
『・・・奥野さん。俺。』
自分自身をコントロールしきれないことを言い訳できなかった。
「日詠クンが全てを背負う必要はないんじゃない?」
奥野さんは人体模型の左手を取って両手でグッと握った。
俺なりの伶菜を支える術が間違いではないことを訴えるかのように。
「伶菜ちゃんはそれをわかっているから、あたしに診て欲しいと望んだ。日詠クンのことを理解している人間だと思われているみたいだしね。だから・・・・」
彼女は人体模型の左手を握りながら、今度はそれの顔をじっと見つめた。
「どのような立場であれ、伶菜ちゃんの心の声を聞き逃さないこと。それが大切なんじゃない?」
視線を人体模型から自分のほうへ向けた奥野さんは “じゃあね” と行って講義室から出て行ってしまった。
奥野さんの言う通り
俺は伶菜と自分の関係のこだわりすぎているのかもしれない
遺伝相談室で一緒に患者を支える関係
夫と妻
1児の父親と母親
それなりに上手くやれてきていた
そう思っている
そしてこれからは
2児の父親と母親になる
伶菜と俺なら
今までと変わらずに上手くやっていけるだろう
だから
関係性とか難しく考えずに
奥野さんの言う通り、シンプルに
伶菜の心の声にしっかりと自分の心の耳を傾ければいいのだろうか・・・