ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



「ナオフミさん、今日は両親学級に付き合ってくれてありがとう♪」

『奥野さんにやられっ放しだったけどな。』


奥野さんと入れ替わるように、伶菜が祐希を連れて戻って来た。
奥野さんと俺が話をする機会を設けるよう彼女達が前もって相談していたのでは・・・・?と思えてしまうぐらいタイミングが良かった。



「それでも、ナオフミさん・・・周りにいたお父さん達と同じ表情をしていて・・・・嬉しかった。」

『同じ・・表情?』

「そう、同じ顔。生まれてくるお腹の赤ちゃんのために、一所懸命になっているとこ。私ね・・・」


伶菜は途中で言葉を止めた。
自分をじっと見つめるその表情に
俺は彼女にやさしく包まれているような感覚を覚えた。


俺が欲しかったもの
そして
彼女が欲しかったもの
それは
新たに育つ命を穏やかな気持ちで一緒に見守る
こういう時間なんだと思った。


「新笠寺駅のホームに、あの時、偶然居合わせてくれた人がアナタでよかった・・・そう思ってる。」

だからこういう時間が今もこれからもずっと続くものだと思っていた。


それなのに
柔らかい笑顔を浮かべそう呟いた彼女が
どこか遠くへ行ってしまうような錯覚にも襲われた。

これからも彼女とずっと一緒にいるという願望
彼女がどこか遠くへ行ってしまう錯覚


この2つが混在していた自分の中で錯覚のほうを掻き消したこの時の俺は

彼女が自殺企図しようとした駅のホームで俺と出逢ったことに感謝をしていて
そこがなかったら俺達は出逢うことがなかった
だから俺に出逢えてよかった

・・・伶菜はその言葉通り、そんなことを思っているんだと感じた。

しかし、この言葉はそれだけの意味だけではなかった。


もっと早くその言葉に秘められた彼女の心の声に気がついてやらなきゃいけなかった。
事前に感じたあの錯覚を
俺の気のせいだろうなんて思わなけりゃよかった。


そんなことを思い知らされたのは
もう少し後のこと・・・。


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