ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Hiei's eye カルテ23:impatient
【Hiei's eye カルテ23:impatient】
その時、俺は産科の外来診察をしていた。
「日詠先生~。陣痛きた場合、どのタイミングで病院に来たらいいですか?」
『2人目でしたっけ?』
「そうそう。初産は時間がかかるって聞いてたけど、あっという間に産まれたんですよ。」
『2人目も早いかもしれないので、陣痛が10分おきに来るようになったら来て下さい。』
「は~い。」
妊娠36週の妊婦さんと話をしていた時、診察室の固定電話が鳴った。
「もしもし、ナオフミくん?」
俺が応対する前に声を発したのは福本さん。
「奥野先生の医療秘書さんから電話が入って、伶菜ちゃんが破水して病院に来たって。」
『破水?』
「そう。まだ診察が終わっていない患者さん、何人いる?」
電話から聞こえてくる声は
福本さんのよくある “どうでもいい” 電話の声ではなく
状況判断を促すような引き締まった声だった。
背中を押されるように、俺はパソコンの患者予約画面を指で辿る。
『5人です。』
「すぐに終わらないわね。美咲先生がもう少しで病棟での処置が終わりそうだから、代診頼む?」
『確か病棟にもうすぐ分娩に向かいそうなハイリスクの妊婦さんがいたはず。なので、代診はいらないです。そっちに人手が欲しいだろうし。』
「大丈夫?前みたいに上の空は許されないわよ。」
福本さんが言う “前みたいに上の空” は
祐希がもうすぐ産まれそうという情報を耳にした時のことだ。