ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
『あの!そのお客さん、下車する際に、飴とかチョコレートとかを運転手さんにくれたりしませんでした?』
「えっ?お客さん、なんでご存知なんですか?」
『彼女の習慣というか・・・親切にしてくれた人とか頑張っている人とかに飴とかを差し入れするんで。』
本当にちょっとしたことだけど心が近くなるようなその習慣
最近では俺にもそれが伝染してきていて
俺もお母さんの出産に付き添ったお子さん達に飴をあげたりするようになったぐらいだ
「もしかして、お客さん、その妊婦さんのダンナさん?!」
『・・・・おそらく。』
世の中は狭い
そう思った
俺の知らないところでも
彼女がこうやって他人を魅了している
しかもそんな彼女の優しい足跡が
知らない人から俺の元に届けられる
それに対して嫉妬心を抱くばかりでなく
そろそろ理解しなきゃな
伶菜という人は
いろいろな人の心の中にもすうっと入り込んでしまうだけではなく
癒しまでを与えてしまう人間なんだということを・・・
「素敵な奥様ですね。ダンナさんも大変ですね~」
『・・・まあ、いろいろと。』
ピピピ!!!!ピピピ!!!!
『すみません、電話。』
「どうぞ、遠慮なく。病院からかもしれないですから。」
伶菜の心和ませるエピソードを運転手から聞かせてもらっていた俺のYシャツの胸ポケットの中で突然鳴り響いた携帯電話の着信音。
見覚えのない電話番号。
しかも、名古屋の市外局番052。
ウチの病院の番号ではなかった。
おそらく
伶菜が通院している城北病院のもの
伶菜に何かあったのか?
破水したとは聞いたけれど
陣痛が来てから破水したとは聞いていない
産気づいたって聞いたから陣痛は来たみたいだが
陣痛と破水
どっちが先なんだ?
早期破水ならまだしもプロム(前期破水)?