ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



それでも聞こえてくるふたつの声。


「痛い・・痛い・・・助産師さん、まだ診てくれないかな~」

「近くにいないな。助産師さんに声、かけてこようか?」

「そうして。しんどいし。」


苦しそうな女性の声とオロオロしていそうな男の人の声。
他事を考えようといくら頑張っても、緊迫感に打ち負けて。

『やっぱドキドキする~。なんか怖い、な・・・』

やせ我慢するのをやめて正直に弱音を吐いた。


妊娠発覚以来、ずっと診て下さっている奥野先生に相談した上で
今回の出産は帝王切開で出産した祐希の時とは異なり、自然に流れに任せる出産をしたいとTOLAC(帝王切開後試験分娩)を選択したのは自分だったのに
今頃になって怖がるなんて、駄目だな~私

でも、この気持ち
どうしたらいいのかな?
怖がっていて大丈夫かな?
あ~どうしよう・・・

そんなことをずっと考えていたのに
考えても考えても出てこない答え。
そんなことをしているうちに左隣にいた人達は分娩室に案内されていた。


次は私かも?
時々、お腹の痛みはあるけれど
これが陣痛なのかな?

陣痛の痛みってどれくらいなのかな?
その時が来るのはいつなんだろう?

そう途方に暮れようとしていた時だった。



「とうとうだな。」

背中のほうから聞こえてきたダイスキな低くて穏やかな声。

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