ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
『ナオフミさん!!!!いつ来たの?南桜のほうは?』
「今さっき。外来診察はちゃんと終えてきたから心配はいらない。」
振り向きざまに矢継ぎ早に問いかけた私にナオフミさんは丁寧に答えてくれた。
それだけではなく
「足の遅いお父さん、登場。レイナ~、待たせちゃったか?」
ベッドサイドにおいてあった丸椅子に腰掛けながら
森村先生のようなちょっとトボけた口調で親指を立てた。
『やだ~!!!!森村先生に似てきてる~。』
「やっぱ、やめた。俺は人の弁当の椎茸、盗み食いとかしないし。」
『えっ?』
「昔の話だよ。」
『・・・・・昔?』
「楽しみにしていた伶菜お手製の筑前煮の椎茸をヤツにやられた。」
顔を見合わせて笑った。
ひとりで頑張ろうとしていたのに
その必要がなくなったと思えて。
私の頭を優しくふわりと触れるその手に
涙が出そうになった。
「心細い想いさせて・・・ゴメンな。」
そう言いながら笑った顔が目に溜まった涙のせいで歪んで見えて。
「泣くのまで我慢するとか・・・こんな時まで俺に気を遣ってたら駄目。」
頬を触れてきた温かい指に
とうとう涙がこぼれた。
『どうなっちゃうんだろうって。』
「そうか。」
『・・・怖かった。』
「そうか。怖かったか。」
『・・・寂しかった。』
「・・・・ゴメン。」
『でも・・・もう大丈夫。』
「・・・・?」
『世界で一番ダイスキなお父さん・・・・が登場したから。』
ナオフミさんと一緒に時を過ごしてきた中でこの時が一番、
自分に正直になって言葉を紡いだんだと思う。
弱気な自分を
甘えたい自分を
さらけだしちゃってもいいんだ
そう思えた。