ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


ううん
そう思っていい
そんな風に感じたんだ。


「じゃあ・・」

『ん?』

「世界で一番ダイスキなお母さん・・・一緒に頑張るか。」


照れくさそうに顔を逸らした彼。


『えっ、聴こえなかった・・・もう1回言って!』

「なんだっけな?」

『そんな・・あっ、お腹・・痛い。』

「どのへん?」


そう言いながら背中をさする彼が
自分のすぐ近くにいてくれていることを実感できたから。

今まで経験したことのないくらいのお腹の痛みと
普段感じることのないような息苦しさも感じる時間が増えてきて
これが陣痛なんだと自分でもわかった。


そんな時間もナオフミさんが
心配そうな顔をしながら背中や腰をさすってくれたり
両親学級で教わった呼吸方法を一緒に実践してくれたり
陣痛の合間に“タクシーの運転手から預かったんだぞ”と見覚えのあるイチゴ飴を口の中に入れてくれたり・・・

ふたりで頑張っているんだと実感できる
本当にほんとうに幸せな時間が流れた。


それでも
そんな時間はずっと続くことはなかった。




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