ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


「あとICU(集中治療室)へ至急連絡して下さい!!!!!!」

「日詠さんの・・・旦那さん?!」

日詠クンの素性をわかっていないらしい助産師が拍子抜けな顔をしながら首を傾げた。


そうだよね?

今の今まで
カノジョの夫としてここにいた訳だから
助産師が不思議に思っても仕方がない


だけど大丈夫
このカレなら大丈夫
いつものカレだから・・・


必ず伶菜ちゃんを救い上げられる
そして自分で這い上がる

産科医師としての自信を手にして・・・・



『いいから。その人の指示を聞いて!!!!! ガウン、手袋も渡して!!!! 心電図も準備。』

「ハイ!!!!!」


止まりかけていた空気が再び動き出した。
ここにいる人達、みんなも。


「ミラクリッド、イノバンをシリンジポンプで。アンチトロンビン3000単位、FFP15単位も。」


Yシャツにスラックス姿だったカレも
ガウンと手袋を手早く装着しながら指示を出した。

助産師や看護師の目を見ながら指示を出すその姿も
いつものカレそのもので。

ひとりでこの場を乗り切らなきゃいけないと思っていた私は
本当に心強いと思った。



『MAP4単位はもう出てる。』

「ZN-CP、STNデータ用の血清もアルミホイル遮光し、三宅教授に至急送って下さい。」

『まさか・・・・』

「伶菜は・・・・このケースはアレルギーがあります。羊水塞栓症かもしれません。」




【羊水塞栓症】

羊水成分が母体血中へ流入することによって引き起こされる急性呼吸循環不全・播種性血管内凝固症候群(DIC)を呈する病態
その頻度はごくまれ(約6~8万分娩に1例)であるが、致死率は60~80%と高く、予後不良なケースが多くを占めるとされている



この大出血は破水後の常位早期胎盤剥離かもしれないと思っていた
それによる体調の急変だと
もちろんそれも起こっているかもしれない
でも
羊水塞栓症の可能性はまったく頭になかった

常位早期胎盤剥離でも対応はかなり難しいのに
羊水塞栓症はそれよりもっと難しい

もし本当に羊水塞栓症を発症していたら
私ひとりではとても対応できない。


それでも
彼と一緒にならできることがあるかもしれない・・・



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