ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



『・・・すみません。失礼なことを申し上げて。』


彼女の担当医師の想いを気にかけることなく
その人の医師としても技量までも疑った。

自分勝手な思い込みをして他人を傷つけてしまうぐらい
この時の俺は本当にどうしようもなかった。


「僕も・・戸惑うことありますよ。本当に最善を尽くせたのか?って・・・・でも。」


それでも彼は俺の失礼な言動に腹を立てることなく
俺を諭すようにゆっくりと言葉を紡ぐ。


「やるべきことを適切に確実にやったと胸を張って言えるような仕事をする・・それが最善を尽くすことなんだよな?って自分に言い聞かせています。」


こういう場面は今までに何度も遭遇しているのだろう
だからこそ
説得力と医師としてのプライドを感じた。


ICUという生死がすぐ隣り合わせという現場で
日夜ずっと従事している人間の心の持ち方を知った。

産科医師として母体と胎児の命を守っている現場にいる自分以外にも
そういう人達がちゃんといることを改めて実感した。



「そんな私共を信じて下さい。アナタ達が繋いだ命は必ず繋ぎます。だから、伶菜さんの生きようとする力を信じてあげて下さい。」


医療に必ず大丈夫なんてない

そんなこと今まで
嫌というほど思い知らされた

しかも
伶菜はここ1~2日がヤマらしいのに・・・・


それなのに
自分達を信じろと力強く言ったICUの主治医の言葉が
自暴自棄気味になっていた俺に
大切なものを教えてくれた。



“信じる” ということを・・・・


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