ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


反射的に繋いでいた指に力がこもった。

最後まで聞こえなかったらしい看護師の言葉の続きを
・・・・・今すぐ聞きたい自分と
・・・・・聞くのが怖い自分。


その2つの自分を行ったり来たりする機会を

「とにかく、NICUの橘先生が今すぐにお話したいそうです!!!!今すぐにNICUの面談室へ来て下さいってことです。」

『・・・・・・・・・・』

「戸川さん、オペ室から患者さん移動お願いって!!!!」

「今、行きます!!!!!・・・すみません、それじゃ。」


その看護師は俺に与えてはくれずに、彼女を呼ぶ声のほうへ戻って行ってしまった。
そうしているうちに繋がっている指の力が無意識のうちに少し緩んでいた。


このまま伶菜の手を離して
赤ん坊のところへ行ったら
彼女はどうなる?


もし、俺がここを離れている間に
何かあったら・・・・・

でも、赤ん坊の容態だってどうなのか
看護師に聞けずわからないままだ



分娩時に聞こえなかった赤ん坊の泣き声
おそらく新生児仮死状態だったのだろう

伶菜が羊水塞栓症を発症した上に
母体の循環状態が非常に不安定な状態に陥ったのだから
その可能性は高い

新生児仮死状態でそのまま死に至ることだってある


それでも
産科医師の俺が赤ん坊にしてやれることは
何もない

そんな俺は
どうしたらいいのだろう?



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