ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



『・・・・・・・・・・・』


判断力が鈍っていた俺は
答えを探すように伶菜の顔を凝視した。


いつもの彼女は
透き通るピンク色の肌
唇だって桜色


でも今は
蒼白い肌
唇の色だって真っ青で
体調がいいなんて程遠い顔



それでも
なぜか力強さを感じた。
彼女特有の力強さを・・・・・



俺の勝手な思い込みなのかもしれない
“私は大丈夫だから” と言わんばかりな雰囲気を感じずにはいられない


「NICUの橘先生が今すぐにお話したいそうです。お父さんを呼んで来てとまた電話があって。」

『・・・お父さん・・・・』

「そうです。今すぐ行けそうですか?」


ついさっき声をかけてくれた人とは別の看護師が口にした
お父さんという言葉がすっと入り込んできた。



産科医師としての自分が今
伶菜にしてやれることはない
赤ん坊にもしてやれることはない


けれども
彼女らの家族として
赤ん坊の父親として
意識が戻っていない伶菜の分まで
赤ん坊の今を見守る役割がある

・・・そんなことに気がついた。




『行きます。NICUの場所教えて下さい。』


赤ん坊の現実にしっかりと向き合ってくる
だから
それまでここで俺を待っていて欲しい


そんな想いを込めて俺は
伶菜の顔をもう一度じっと見つめながら
再度、彼女の指に自分の指を絡ませて強く握った。


『行ってくる。』


目を閉じたままの彼女に俺はそう告げてから背を向け、NICUに向かった。



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