ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
伶菜のお腹の中にいた祐希の心臓病の発覚
それは胎児エコー(超音波検査)で偶然見つかった
しかも、その心臓病はかなり高度な技術による治療が必要で、
産科医師と心臓血管外科医師との連携が不可欠となる難しい病気
それを行える心臓血管外科医師がウチの病院にいなかっただけでなく
産科医師である俺自身も自分の腕を不安視してしまった
自分がひとつでも間違えたらと思うと
それまでに感じたことのない不安に襲われた
自分が間違いを起こしたら
自分の手によって
彼女達の命を
自分の大切な存在を失う
それをイヤというほど痛感させられたコトはこの時が初めてだった
それぐらい
その時にはもう
伶菜、そしてその子供の祐希は
自分にとってかけがえのない存在になっていたから・・・
そんな俺は
彼女らを自分の手で救うことを断念して
妊娠9ヶ月の彼女に有能な心臓血管外科医師と産科医師がいる東京の大学病院への転院を勧めた
本当はすぐ傍で彼女らを支えてあげたかったのに・・・・
大切な存在を失うコトを怖れた俺は
医師として彼女達を救えなかった
それだけでなく
医師として立っていられる自信すらなくなった
それでも伶菜はそんな俺の背中を押してくれた
“他の患者さんのためにちゃんとメスを握って欲しい”と
そうやって俺は伶菜に救われた
だから今、俺はこうやって産科医師を続けることができている
だから俺はほぼ毎日NICUへやってくる。
“自分の手を介して生まれてきた命とお母さんをちゃんとすぐ傍で見守ろう”と
今、自分がそうすることで・・・5年前、それをしてやれなかった伶菜と祐希への償いになると信じて
そうやって俺は過去の自分と向き合うことで、
今の伶菜と祐希にも家族として真正面から向き合えている
彼女らが愛しい
その想いで心が満たされながら