ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



『面会で来たんだけど、部屋がどこかわからなくてさ・・・』

「かしこまりました。その方のお名前を教えて頂けますか?」

『レイナ!!!!! あっ、高梨、じゃなくて日詠レイナ!!!!!』

「日詠レイナさまですね。お調べ致しますのでこのままお待ちください。」

病院受付のお姉さんがパソコンのキーボードをカチャカチャと動かしているすきに病院内をぐるりと見回した。


『ウチの病院と造りが似てるな~。姉妹病院だからか?』

「お待たせ致しました。日詠レイナ様ですが、・・・2階のICU病棟に入院中でして・・・次の面会時間は今から1時間半後の11時15分から11時30分となっております。」


申し訳なさそうに教えてくれた病院受付のお姉さん。

オレは
日曜日だから朝10時くらいから、面会できると思っていたことよりも
レイナがICUに入院していることに驚いて
目の前のお姉さんにしかめっ面をしてしまっただけなのに。



「ICU前に家族待合室があります。また、院内1階にレストラン、売店、カフェ等もありますのでよろしかったら面会時間までの持ち時間、そちらもご利用下さい。」

オレが待ち時間があることにイラついたと勘違いしたらしい受付のお姉さんは苦笑いしながら院内地図上のレストランなどに丸印をつけて渡してくれた。
ICUの場所には赤印もつけてくれていた。



医者のクセに
息の止まりそうな空気が流れる “家族待合室” が苦手なオレ。
だから教えてもらったカフェで時間を潰すことにした。

幼い頃からダイスキな中日ドラゴンズびいきのスポーツ紙を読んでいても
クリームソーダにのせられたアイスを丁寧にすくって食べてみても
胸のざわつきを誤魔化せない。



出産したはずのレイナに何が起こったんだ?
ICUにいるなんて
かなりヤバイ状態なのか?

そんなことばかり頭の中を駆け巡り
腕時計の秒針を追う
そんな時間を過ごした。


それなのに

「ICUの面会はご家族、ご親族のみとさせて頂いておりますが・・・」

堅物そうなICU受付の人がそう言いながら
オレに、面会についての案内という説明書を渡してきた。


『アニキだよ。小さい頃はレイナと・・・一緒にカキ氷をはんぶんこして食べたり、大須観音で鬼ごっこしたり・・・・東山動物園で一緒に迷子になったりもした仲ってヤツ。』

ペラペラと嘘を並べてみたが、罪悪感なんて感じなかった。
オレにとって
レイナは
妹みたいなモンになっていたから。

受付の人は
その説明要りますか?と言わんばかりの引き気味な態度だったが、俺に面会者名簿に氏名を書き込むように促した。


急いで “森村優(アニキ)” と書いて、入口に設置されている洗面台で手を洗いICUエリアの中に入った。


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