ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



多分、日詠さんは伶菜に出会ってから
ずっとこんな苦悩を抱えていたんだろう

医師として
伶菜を自分の手で守ってやりたいのに
それができずに彼女を他人に託した

そんな苦悩

それをこの時の奥野さんとオレも
嫌というほど思い知らされた



カレとカノジョ
日詠さんとレイナ
どちらも
俺達にとって大切な存在になっていたから

カレとカノジョ
ふたりが
これからどこへ辿り着くのかわからない


だからせめて
ずっとふたりでいさせてあげたかった。


それなのに・・・・



「奥野くん。カレは、日詠くんはまだこっちに出て来れそうにないかね?」



レイナのお見舞いに行ったけど遠くで見つめただけだったあの日の翌日の医局。
日詠さんのデスクに目をやりながら、前日に見たベッドに横たわるレイナと日詠さんの後ろ姿を想い出し、自分の無力感に苛まれていた時だった。


「困るんだよね~。こっちもさ、こんな忙しい時期だし。日詠クン宛の紹介状を持った妊婦がカレの診察を希望しているもんだからね・・・」

自分勝手気味に言葉を羅列していて、腹がタヌキみたいに出っ張っている白衣を着たおっさんが電話越しの相手を困らせているように見えた。


「とりあえず、日詠くんをこっちに一度来るように伝えておいてくれたまえ。頼むぞ、奥野く・・・なんだお前!!!!!」

衝動的に奪い取った携帯電話を耳に当てる。


『もしもし、奥野さん?日詠さん、こっち来させなくていいで!!!!!』

{誰?! もしかして森村、、、さん?}


電話の向こう側は予想通り
日詠さんの元同僚で先輩医師の奥野さん。

産婦人科部長の電話から
整形外科のオレの声が聞こえたことに驚いているようだった。



< 325 / 367 >

この作品をシェア

pagetop