ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「そうそう、オレ。こっちは任せろ。三宅教授を口説き落として名古屋医大からも応援が来るようになったから。」
『・・・・・・』
「なんで黙るんだよ。部長も休んでいいって言ってるんだから、堂々と休めって。周りに甘えることも時には必要だ。周りはずっと日詠さんとレイナに甘えてきたんだしな。」
『・・・・・・』
いつもと違う部長をつくりあげたのは
おそらく彼なんだろう
伶菜のためなら
誰が相手だろうと行動を起こす彼
いろいろ考え過ぎてしまって機を逸する傾向が強い俺は
そんな彼に対して引け目を感じていて
オレがレイナの主治医だと
堂々と口にする彼を羨ましいとも思っているのに
「主治医は傍にいてやらないといけないんだぞ。・・・日詠さんはレイナの主治医なんだから。」
そんな彼は俺を彼女の主治医だと口にした。
いつもと違う部長をつくりあげたのは彼だろうけれど
いつもと違う彼をつくってしまったのは
おそらく俺なんだろう・・・・
『・・・森村・・・』
伶菜の主治医という立場を
完璧な治療で最後までやり遂げた森村と
途中で降りた俺
伶菜と想いが通じ合ってからもずっと
その過去が自分の心の中でひっかかっている
「なんだよ、らしくないな。しおらしい声して。自分はレイナの主治医じゃないって思っているとか?助けたんだろ?レイナのこと。」
『・・・意識が戻っていないんだ。彼女を助けたことにはならない。森村みたいに俺は伶菜に完璧な治療をしてやれなかった。』
「・・・・・・・」
『悪い。そんなつもりじゃ・・・』
珍しく黙ってしまった電話の向こう側の森村に
俺は即座に謝った。
“ひとりにして欲しい” と奥野さんに気を遣わせてしまったように
森村にも嫌な想いをさせたような気がしたから。
「・・・完璧な治療はただの結果論だろ?」
『・・・・・・・・・・』
いつもの彼の調子づいた口調ではなく、至って真面目な声色でそう言った。
電話越しでもその真剣さは充分に伝わってきた。