ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


“ドクター、ナース、薬剤師の皆様にお知らせします。大至急、管理棟5階の大会議室にお集まり下さい。”

『薬剤師も?なんなんだ?』

今度はマスクを外し、ゴミ箱に投げ入れた。


早く電話して伶菜の声を聞いて
ちゃんと謝って
それから
早く帰って、伶菜に今日の俺の不手際を謝って
カルパッチョを作って食べさせてやりたい


それらが一日の業務を終えた俺の頭の中の大半を占めていたが、
スタッドコールを無視するわけにもいかず、とりあえず大会議室へ向かうことにした。


「あれ?日詠先生・・・もうお帰りになったんじゃ?もしかしてNICUにいらっしゃったんですか?」

大会議室の前で産科の後輩女性医師の美咲が首を傾げながら俺に話しかけてきた。


『ああ、NICUの帰り。』

「救命病棟じゃなくて、会議室に集合なんて・・・・なんかあったんでしょうか?」

『・・・・・・・・・』


今日の自分や産科の様子を振り返ってみるが、
特に問題になりそうな事柄は思い浮かばなかった。


「とりあえず、中、入ります?」

『・・・ああ』


美咲と俺はお互いに眉間に皺を寄せながら大会議室の中へ入った。
大会議室の中は医師、看護師、薬剤師が大勢集まっており、誰もがなぜここに集められたのか今ひとつの人の多さになんだか気後れ気味な俺は部屋の後方で壁にもたれて腕組みをしながら立ってみる。


「皆さん、お忙しい中、お集まり頂きありがとうございます。」

会議室前方のホワイトボードの前には脇にぶ厚いファイルを抱えたグレーのスーツ姿の男性がマイクでそうアナウンスしながら現れた。

「誰なんですかね?」

『さあ、知らないな。』


俺だけでなく美咲も知らない人物。


「病院監査室の江草です。」



監査室・・・?

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