ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
強く感じる喉の違和感。
声の出しにくさ。
全身の倦怠感。
光の眩しさ。
耳につく様々な雑音。
それらに負けそうになる自分がいて。
「日詠さん、ゼリーでも食べてみますか?」
主治医の先生にとにかく食べるように言われているけれど
食欲も意欲も出なくて。
せっかく看護師さんが差し出してくれたオレンジゼリーが載ったスプーンを首を振って拒んだ。
「抜管できたな・・・喉、詰まる感じある?」
ナオフミさんも心配そうで。
大丈夫だよって言いたいんだけど
まだ声が出ない。
身体もしんどくて首を横に振るのが精一杯。
「・・・そうか。食べれそうなものがあれば・・・・と思うけど、お腹も空かないよな。」
『・・・・・・・』
「辛い想いさせてゴメン。」
気を遣わせてしまっていることに
謝ることすらできない
言いたいこと
いっぱいあるのに
聞きたいことも
いっぱいあるのに
助けてくれてありがとうも
言いたいのに
言えない自分の身体に
もどかしさを感じで仕方がない
「ご主人、すみません。橘先生がご主人とお話がしたいと呼んでいますが・・・」
『あっ、はい・・・でも・・・』
「今しか時間がとれないそうです。申し訳ないですが・・とも橘先生も申しておりましたが。」
看護師さんとナオフミさんの視線を受けて私は頷く。
こうやって時々、席を外すけれど
窓から光が差し込んでいる間は殆どの時間を傍に居てくれているナオフミさん。
本当はこの時も
ナオフミさんの仕事、どうしてるの?
患者さんは大丈夫?なんて考えるべきだったんだろう
赤ちゃんは大丈夫?って
母親らしく聞くべきなんだろう
けれども
そんな余裕を抱くことができなかった。
それぐらい
ひとりでいることが心細かった。
ナオフミさんに甘えていた。
そんな自分が情けない
そう思うと溢れてくる涙。
「ゴメンな。ベビーのところに行ってくる。でもすぐに戻るから・・・」