ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Hiei’s  eye カルテ27:the core



【Hiei’s  eye カルテ27:the core】



ベビーと初対面を果たした伶菜。

体がだるそうな中、ベビーに手を伸ばした彼女の雰囲気は
それ以前の彼女とは明らかに違って見えた。
その雰囲気の変化は俺の気のせいではなかったようで。

その後の彼女は
NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)用のマスクを外した状態での食事にもトライし始めた。
最初は三口ぐらいで息が上がる状況であったが、それでも食べることを拒むことがなかった。
ベビーに触れる手にも力がこもるようにもなっていた。

そして何よりも笑うことが増えた。

それに伴って
俺の安堵感を増すようになり
そのせいもあってか、ついこの間も
まだ窓から太陽の光が差し込む時間帯にも関わらず
伶菜のベッドに伏せたまま眠ってしまった。

そんな自分が目を覚ましたのは
髪の毛がゆらりと揺れたような感覚によって。


それと

「・・・ちゃんと、聴こえ、、てい、、、た・・・よ。」

囁くような掠れた声が聴こえたからだ。



久しぶりに耳にした彼女の声。

NPPVのマスクに顔を覆われているせいで
声がマスク内にこもっていたが
それでも聞き逃さなかった。

本当はもっと聴きたい

彼女の声
そして
彼女が聴こえていたという事柄を


でも、たくさん話すことも身体に負担がかかるであろうから
今は眠ったフリをしよう
そう思って目を閉じた。


それなのに
再び揺れる俺の髪。

自分に何かを伝えようという強い気持ちが
彼女の中にあるんだと感じた。


『伶菜?』

俺は伏せていたままの身体を起こし、彼女の名を呼んだ。

NPPVのマスクを固定しているベルトを引っ張ろうとするが
まだ力が入りきらない指ではそれを引っ張りきれないようだった。


『マスク、外したいのか?』

俺の問いかけに彼女はゆっくりと頷く。


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