ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
マスクのベルトに絡まっていた彼女の髪をそっと除けてから
ベルト、マスクの順にそれらを外した。
『鼻、痛くないか?』
まだ絡まっていた彼女の髪をゆっくりとほぐしている時に気がついた。
鼻筋の両端にマスクの圧迫痕が残っていたことを。
赤くもないのにそれが痛々しく見えた。
それはマスクがきちんと固定されていた証拠なのだが
彼女に苦しい想いをさせてしまっているという感情があるせいか
それすら痛々しく見えてしまった。
それなのに
「・・・・・・・・」
大きく首を横に振った彼女。
その瞳を見つめて想い出した。
自ら命を絶とうとしていた彼女の腹が大きくなるのに従うように
彼女の瞳の力強さが増していったことを。
そして
“・・・・レイナの底力を信じろ!!!!”
と叫んだ森村の声も。
マスクを外したままだと呼吸状態が悪化しないかと心配になる俺と
伶菜が発した “ちゃんと聴こえていたよ” という言葉が何を指しているのか知りたい俺。
相反する感情が同居してしまった俺は
彼女を黙ってただ見つめるしかできなかった。
けれども
かすかに彼女の息が上がり始めたのを感じ取った俺は
外したまま手に持っていたNPPVのマスクを再び彼女の顔に近づけた。
やっぱりまだしんどいよな
無理させたくない
ゴメン
こんなに息が上がってまで何か訴えたいのに
わかってやれなくて
ゴメン・・・
相反していた感情のうちの“彼女の身体が心配な気持ち”のほうが勝った自分。
その想いを抱きながら下唇を噛み、彼女の口にマスクを装着させようとした。
・・・・その時だった。