ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
彼女がマスクを持ったままだった俺の右手を掴んだ。
息苦しそうなのに
大きくそして激しく首を振った。
そして
「ナオフミさんの・・・声、、、、聴こ、、、、え・・・た。」
彼女の声がちゃんと聴こえた。
でも、さっきよりも明らかに息が上がっていた。
無理して欲しくない
だけど
そんなにも苦しそうなのに
伝えたい想いが彼女の中にあるんだな・・・・
そう思った瞬間、マスクを持っていた自分の右手の指先の力が若干緩んだ。
それが彼女に伝わったのか、
俺の右手首を掴んでいた彼女の手の力も緩んだ。
手首を解放された俺は彼女のベッドに腰掛け、
以前よりも少しだけ血色が良くなっていた彼女の唇を人差し指でそっと触れた。
指先を介して伝わってくる彼女の温度。
予想していたよりも温かみのあったそれに触れたことで
『どんな声、だったんだ?』
ちゃんと生きている彼女の
活きた言葉を聞く勇気をもらった。
『・・・教えてくれるか?』
俺の問いかけに対して
本当に嬉しそうに頷いてくれた。
彼女の声を聞く前に
その嬉しそうな顔だけでも
俺は救われた気になった。
あんなにもこんなにも苦しい想いをしていたのに
そんな嬉しそうな顔をしてくれた彼女に。
それだけで俺はもう充分満たされてしまったのに・・・・・
「ナオフミさんが、、、、、、、、必死に、、、、治療の指示・・・・・出す・・・声。」
『声・・・?』
彼女は息苦しさを紛らわすためにか胸に手を当てながら
俺の問いかけに必死に応えてくれた。
もしかして
分娩時、遠のく意識の中でも
俺の声を聴こうとしていたのか?
本当なら
自分の身体のことで精一杯なはずなのに
俺は今でも
あの時の俺は自分の手で彼女を救ってやれなかったという事実しか頭に残っていないけれど
あの苦しそうな中
伶菜はどんな気持ちで
俺の声に耳を傾けてくれていたんだろう?
「・・・わたしの命を、、、、何度でも救うという約束を・・・・いつも守ってくれる・・・・主治医の先生で・・・・ダンナさまでもある人の・・声・・・・」