ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



仲間である私が彼に何かしてあげられたコトはなかったのかな?

新米だけど臨床心理士という立場にある私が
彼の異変にちゃんと気がついていれば
もしかしてこんなコトにならなかったのかも・・・

ちゃんと気がついてあげなきゃいけなかった
ちゃんと見抜いてあげなきゃいけなかった
仲間なんだから・・・




彼の仲間としても
臨床心理士としても
全然ダメだ・・・





グイッ!!!!!!!!


『・・・ッツ!!!!!!!』



いきなり掴まれた自分の左手。
そのまま袖口もひじ上まで捲り上げられた。

『何するんですか!!!』

突然の出来事に大声を上げた私。


「あなたは、注射痕とかはなさそうですね。」

『えっ?』

鋭い視線で自分の瞳を射抜かれたような気がした。
目の前にいる、ついさっき初めて会ったばかりの江草さんという人に。


「でも、コレはリストカットの痕ですよね?」

私の左手に残っているいくつかの傷痕
当時付き合っていた彼氏が二股どころか三股をしていた事実を知り、自暴自棄になった時に自分自身でつけた左手首の傷
まだ乳児だった祐希が転落しそうになったのを助けようとしてガラスに突っ込んでできてしまった左手指の傷

江草さんは私の左手首を指差しながらそう問い掛けてきた。

リストカットはもう随分前の過ち
当時はリストカットに留まらず、本当に死んでしまおうと自ら電車に飛び込もうとしていたぐらい
精神的にもボロボロだった。

けれども

そんな私を救ってくれたナオフミさんをはじめ、多くの人達に支えられながら、その時のココロの痛みはかなり和らいできていたのに
その時の感覚がじわじわとよみがえりそうで
眩暈がしそう・・・


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