ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
こんな空気、以前にも感じたことがあった
伶菜のお腹の中にいた優希が無事に生まれたのを機に
兄という立場で伶菜と祐希との同居を始めた
穏やかな3人での暮らしの中、伶菜の元から消えたはずの彼女の元恋人が再び彼女の前に現れた
それがきっかけとなり、伶菜を想う自分が
兄という立場で、家族である伶菜を大切に想うのではなく、
ひとりの男として、彼女を大切に想っていることをはっきりと自覚した俺
そんな俺が元恋人へ伶菜を渡すまいと駆け落ち同然で彼女の手を引いて向かったのは浜名湖
そこで包囲網を仕掛けたように俺達を待ち構えていた友人のサプライズな導きで俺達は結婚式を挙げた
初めてのふたりきりの初夜は
伶菜の体温をすぐ傍で感じたことへの感動から、俺は抱きしめることが精一杯で
深く繋がり合うことなんてできなかった
それなのに翌朝、
伶菜をホテルに残したまま、病院でアクシデントを起こした後輩医師の美咲のもとへ駆けつけた俺
”3年前、伶菜よりも後輩医師の美咲を助けることを優先した俺”
そこから俺と伶菜はすれ違い始めてしまった3年前という過去
その時の記憶が蘇ってしまう
伶菜に、一緒に居て欲しいという気持ちに蓋をさせて、無理矢理の笑顔を引き出させた
それが伶菜と俺はすれ違いの始まりだった
それなのに
また同じことを繰り返すのか?俺は・・・
『・・・・・・・・』
痛々しく見える伶菜の見覚えのあるその笑顔によって俺はとうとう言葉を失った。
「日詠先生、仕事放棄しちゃダメですよ・・・だから早く行って下さい!」
こんなに近くにいるのに
なんでまた伶菜にこんな笑顔をさせてしまっているんだろう・・・?
ただ傍にいて抱きしめることだけではダメなんだろうか?
こんな時まで医師という立場を守らなきゃいけないんだろうか?