ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
『ありがとうございます。』
手渡されたのは微糖の冷たい缶コーヒー。
かなり冷えていたのか、缶の周囲には水滴がたくさんついていた。
「ブラックのほうがよかったかしら?」
そう言いながらベンチに腰掛け、小さく微笑んだ早川室長。
『いえ、ちょっと甘いほうがスキですから・・いただきます。』
私はなんとか口角を引き上げながら、缶コーヒーのプルタブを引き上げた。
「無理して笑わなくていいのよ・・・監査室の事情聴取、大変だったでしょ?」
『ええ、まあ・・』
仕事上では厳しい室長からの優しい声かけに、私はまたもや涙が溢れそうになり、気付かれないように缶コーヒーに口をつけた。
「塩酸モルヒネ事件。あなたが関与していないことはちゃんと伝わったようね。」
『ええ、でも・・・・・』
「前田先生が気になるのね?」
さすが長年、臨床心理士として従事してきた早川室長。
『・・・・ええ。気になります。』
私は正直に答えるしかなかった。
嘘はつけない
なんせ相手は
”無意識の世界”まで見抜くことができる
プロなんだから
「じゃあ、アナタにとって前田先生はどういう存在?」
『・・・・同じ新人として一緒に頑張って行こうと誓い合った大切な仲間です。』
「仲間なのね?」
『ええ。』
早川室長はバカ正直にそう答えた私をじっと見つめてから、ふうっと一息をつき、缶コーヒーを一口飲んだ。
「だったら、あなたが彼をどうにかしてあげられなかったと責任を背負うのはやめなさい。」
『室長・・・』
「前田先生はあなたの患者さんではないのよ。患者さんでもない男の人が犯してしまった罪をあなたが背負うことはないの。・・・・前田先生のためにもならない。」
確かにそう
前田先生は私の患者さんじゃない
でも
こんな騒ぎになる前に私が彼の異変にいち早く気がついてあげられたら・・・
「それにこのままだと潰れるわよ・・アナタも・・・・日詠先生もね。」
日詠先生も・・・・?!