ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
美咲は俺の瞳の奥を覗きこみながらその言葉を紡いだ。
その瞬間、なんとなく自分が試されているような錯覚に陥る俺。
「いいんじゃないって言わないんですね?」
タイミングが悪すぎる
今朝の伶菜の状態じゃ、その患者の気持ちに耳を傾ける余裕があるのかわからない
『だが・・・』
「出産経験があり、年頃も近い高梨さんなら、この患者さんの気持ちをより理解できるのではと思うのですが。」
伶菜にこの患者を任せようとする理由を理路整然と説明する美咲
彼女の言う通り、きっといつもの伶菜ならその患者さんに充分対応できるだろう
『・・・・・』
でも臨床心理士でいる自信を無くしかけている今の伶菜には
“任せても大丈夫”という太鼓判を押してやれない
どうにかしてやらなきゃいけないのに
どうにもしてやれてない
一緒に患者さんを救いたいと願い
伶菜を無理矢理、この病院に引っ張ってきたのは
他でもないこの俺なのに
「日詠先生、このままでいいんですか?」
このままでいい、だと?
美咲の問いかけに反射的に唇を小さく噛んだ俺。
このままでいいわけないことぐらいは俺自身が一番わかっていたから。
でも、どうにもできていない今、
唇を噛むという身体反応が言葉よりも先に出てしまう。
「すみません!!!!!今朝、おふたりの様子見かけちゃいました。今の日詠先生、らしくないです。」
『・・・・ああ』
「そうです。なんか集中できてない感じで。日詠先生らしくなくて心配です。いつも冷静で、どんなことがあっても動じることなく完璧に事を進めるのに・・・・」
いつも冷静で
どんなことがあっても動じることがなく
完璧に事を進める、か・・・
俺らしくない
そんな風に見られてるんだな
「入江先生から聞いちゃいました。高梨さんをこの病院へ引っ張ってきた理由。」
さっきまで俺を問い詰める声を投げかけていた美咲が更に申し訳なさそうな表情をしながらそう言った。