ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


「俺は守ってやれなかったから。いつの間にか自分の中で大切な存在になっていた人を。・・・お互いの立場とかを気遣い過ぎてね。」

『入江さん・・・・』


随分前だけど珍しく酔っ払ってしまったらしい入江さんからちょこっとだけ聞いたことがある
それは入江さんにはずっと後悔し続けた大切な恋があったということ



『綾さんですよね・・?』

「・・・・ああ」


入江さんと綾さんという女性
それは教師と生徒という関係で

“自分はどうなってもいい。けれども相手が辛い立場に追い込まれないように”
お互いにそう想って
だから再び手を繋ぐことができなかった
そんな恋

そんな恋があった入江さんだから
彼から発せられたうらやましいという言葉には重みが感じられる


「一緒に悩んで、、一緒に立ち上がればいい。きっとアイツもそういうコトをしたいと想ってるんじゃないかな?」


穏やかな声でそう言ってくれた入江さんは、再び生徒さんに声をかけられたようで、“ゴメン、また改めて電話します”と言い電話を切った。


一緒に悩んで
一緒に立ち上がればいい・・・かぁ・・・

きっと入江さんも本当はそうしたかったんだよね?
大切な存在になっていた人を


♪~♪~



突然、リビングのローテーブルに置いてあった携帯電話のメール着信音が聞こえてきた。
どうせコンビニからのコーヒー50円offクーポン券お知らせメールだろうと、何気なく受信メール箱を確認したのに


“今朝はごめ”


そのメールはすごく短くて
なぜか文が途切れていて





♪~♪~




その直後に再び来たメールは

“今朝はごめん。ひとりで泣くな”

さっきよりも少し長くて温かい



♪~



“俺がいないところでは泣くなよ。”


ダンナさまであり上司でもある
私の大切な人からのメールだった。




『泣いてないってば。』

ついさっき入江さんが言っていたことが
充分すぎるぐらい理解できた気がして

泣いてないって呟きながらも
顔なんて涙でぼろぼろになっていた私は
携帯電話を頬に摺り寄せていた。

メールの苦手なナオフミさんの温もりが伝わるような気がして・・・・


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