ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Hiei's eye カルテ7:sweet teardrop
【Hiei's eye カルテ7:sweet teardrop】
「日詠サン、意外ですね。メールとかするなんて。」
自分に忠告を投げかけた美咲が立ち去った後、医局で書類を書くことにした俺。
けれどもやっぱり伶菜のことが気になり落ち着かなくて。
デスクの上に置いたままだった私物の携帯電話を手にした。
そして苦手なメールを慣れない指使いで作成している最中に他科の男性医師に声をかけられた。
『ええ、まあ・・・』
「彼女ですか?」
医局内ですれ違う程度で顔に見覚えはあるがどこの診療科の医師かわからないその男はニヤリと笑みを浮かべていて。
『えっ、あっ!!!』
その笑みに不快感を抱いた俺は
作成途中な筈のメールの送信ボタンをうっかり押してしまった。
「その動揺ぶりは、やっぱり彼女ですか~!!!!その事実を看護師達が知ったらガッカリするだろうな~。」
中途半端に送信してしまったメールをなんとかしなくてはと慌てていた俺。
自分に投げかけられているらしい言葉に返答をする余裕なんてもう皆無な状況だ。
「それじゃ、失礼。」
左頬あたりで先程から話しかけていた人物が通り過ぎた気配を感じた。
けれど、俺は返答どころか振り返ることすらできなかった。
それぐらい俺は携帯電話のメール画面にとらわれたままだった。
彼女に伝えようとしていた言葉をもう一度打ち直して再送信したものの
なにかが足りない気がして、
“俺がいないところでは泣くなよ”
さらにもう一文送信してしまった。
それでも送信先の相手の反応がない。
やっぱりメールというものは苦手
相手の反応がわからないと、どうもよくないことばかり考えてしまう
うんともすんとも言わない右手の中にある携帯電話をじっと見つめていると
この時も伶菜の泣き顔が想い浮かんで。
胸が締めつめられるような気分になった俺は反射的に通話ボタンを押した。
耳元で鳴り続けるコール音。
静かに涙を流す伶菜の顔がちらついてそれを自ら打ち切ることができずにいた。
そして、コール音が途切れ
「・・・・・・・・は、、、い・・」
伶菜はやっぱり泣いていた。