ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Reina's eye ケース8:優しいジカン
【Reina's eye ケース8:優しいジカン】
電話の向こう側の彼。
おそらく仕事途中とはわかってた。
私が泣き続けている間、彼は一言も声を発することがなくて。
きっと困らせてしまっているんだなとも思った。
けれども、なかなか泣き止むことができない。
あまりにも優しい時が流れているようにも思えて。
『ごめん、なさい。きっ、、と、、忙しい、、、のに。』
クスッ
えっ
ナオフミさん?
『笑って、、、る?!』
「悪い。安心したから。」
『安心?』
「ああ。」
泣いて安心される
泣かれて安心する
『泣いちゃったけど・・・?』
「ああ。安心した。」
戸惑いが感じられないその返答から
優しい時が流れた理由がわかった気がした。
泣いてもいい場所を一緒に作ってくれた。
そんな大切な場所を作ってくれた大切な人に
泣いた理由をちゃんと話さなきゃいけないと思った。
『あの、あたし・・・』
だから、今回の・・・監査室から聴取された件について、ナオフミさんにもちゃんと話さなきゃと思った。
精神的に不安定な状態だったらしい前田先生にちゃんと気がついてあげられなくて申し訳ないと思っていること
自分に臨床心理士としての適性がないと思ったけれど、それでも彼みたいな人がひとりでも救えたらとも思っていること
今回の件でナオフミさんにも心配をかけたこと
それらを全部素直に伝えなきゃと思った。
『・・・・・・・』
けれども、口は思っているようには動いてくれなくて。
「伶菜?」
『・・あの、その』
今朝、監査部門の面談室の前で切なそうな表情を浮かべたナオフミさんを想い出してしまった。
今回の件を全部伝えたところで、ナオフミさんに更に心配をかけてしまうような想いまでもが頭を過ぎってしまって。
私は自分がどうしたらいいのかもうわからなくなっていた。
そんな私のココロを再び動かし始めたのは
「安心したけど、正直なところ・・・・・腹がたった。」
ナオフミさんのこの一言だった。