ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「そうですよ、期待させちゃダメですよ。彼女にとってもよくないですし。」
「谷本ってば!もういい加減にしなよ!」
「だって、安田先輩もただ、見てるだけじゃ、とられちゃいますよ!日詠センセを。」
それでもやっぱり谷本さんはその勢いを緩めることはなくて。
この3人のやりとりをただ見つめるしかできなかった私。
だけど突然、私の鼻をあの優しいグレープフルーツミントの香りがくすぐって。
パチン。
自分のほうに近づいて来た人物の、その長くてキレイな手指によって私の白衣の胸ポケットに取り付けられていた名札が外されて。
それはそっと目を閉じたその人の白衣の胸ポケットの中に収められてしまった。
「日詠センセッ?!」
さっきとは異なり、悲鳴にも似た声で谷本さんが声をかけたけれど彼は目を閉じたままで。
そして
再び白衣の胸ポケットに右手を伸ばした彼。
ようやく目を開けた彼の胸ポケットから取り出されたものは、名札らしきもので。
なぜか彼はそれを再び私の胸ポケットに挟まったままだった名札ホルダーに取り付けた。
私がつけていた名札を取り外し
彼が着ていた白衣の胸ポケットに入れて
しばらくして、また胸ポケットから出して
私の胸ポケットに付け直す
意味不明な彼・・・ナオフミさんのこの行動。
私は首を傾げずにはいられなくて。
でも
「俺のほうだな。期待しているのは。」
ナオフミさんは私の白衣の胸ポケットに再びぶら下げられた名札を見つめながらそう呟いた。