ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
Reina's eye ケース10:とまどいのイリグチ
【Reina's eye ケース10:とまどいのイリグチ】
産科ナースステーションという公共性の高い場所。
そこで
ナオフミさんのコトがスキで結婚したということを産科スタッフの人達に打ち明けてしまった私。
看護師の谷本さんのように
”どうして日詠先生の奥さんがこの人?”という反応がきっとこれからもあると思う
私はさっきみたいに頑張れる
だけど
先程のような私の対応で本当に大丈夫だったんだろうか?
日詠伶菜という名札を与えてくれたのはナオフミさんだった
それは
“結婚しているということを言っちゃえよ”
というナオフミさんからの合図かと思った
けれども
結婚しています宣言を公と言っていい場所で勢いよくしてしまって
ナオフミさんに迷惑かけてしまっていないか、正直心配
そういう想いが頭を過ぎった瞬間、ナオフミさんと目が合ってしまう。
彼は照れ臭そうに笑った後、すぐさま小さく頷いてくれた。
私の勝手な思い込みかもしれないけれど
“心配するなよ”
そういう想いが伝わってくるような気がした。
「そういえばNICU(新生児集中治療室)に行く予定だったのでは?日詠先生。」
ついさっきまでナオフミさんを腑抜けと笑い飛ばしていた福本さんが彼にバインダーを手渡しながらそう問いかけた。
「・・・・小柳さんがNICUに呼ばれたみたいだけど、顔色が良くないように見えたから。」
ナオフミさんは曇った表情を浮かべる。
「小柳さんって513号室の、昨日、緊急でオペになった患者さん?」
「そうです。血圧がまだ結構高いのに。とりあえず行ってくる。」
彼の眉間にもクッキリと皺が寄っていた。
こんなことは珍しい。
多分、その小柳さんという産婦さんの体調をかなり心配しているのだろう。
俊敏に体の向きを変えた彼がナースステーションを後にしようとしたその時だった。