ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活
「日詠先生、お急ぎのところすみません」
「ん?」
「今日、502号室の宮崎さんが退院予定になっています。退院前に切開部の状態の確認をもう一度お願いします。必要であれば保護テープを追加処方して頂きたいのですが・・」
「わかった。早めに宮崎さんの病室にも顔を出して、退院オーダーに間に合うようにする。」
「助かります。ではここにサイン下さい。」
看護師の安田さんに呼び止められた彼。
恐らく急いでいたはずなのに、嫌な顔を見せることなく分厚いカルテを受け取った。
そして、署名欄らしき箇所を指で辿り、真剣な表情でサインを書き込んでいた。
「それじゃ、よろしく。」
カルテを閉じた彼はそう言いながら安田さんの手の中にそれを戻した。
受け取った安田さんもコクリと頷く。
真っ直ぐな瞳で彼を見つめながら。
そんな彼らは慌しい中でも信頼感が漂う空気に包まれていた。
こんなにすぐ近くにいるのになんだか
どんな患者さんでも力を合わせて救ってしまうような医療ドラマの世界を観ているような感覚
私もいつか、彼らの世界の中に入り込んでいけるのかな?
凄く眩しく見えるこの世界に・・・
心の中でそう自分に問いかけていた時、
ふと気がついたらナオフミさんは私の手がすぐに届くところまでやってきていた。
「日詠。」
『えっ?』
彼は背の高いその体をすっと屈める。
そして、
「日詠伶菜センセも、これからよろしく。」
私の耳元でそっと囁いた。