ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


『美咲先生、あの・・・ご気分が悪くなったりしたのでは?』

美咲先生のその表情の変化が気になりそう呼びかけた瞬間に

「あっ、すみません。大丈夫です。」

彼女の瞳はすぐさま力強さを取り戻していた。


そして

「日詠先生、私からの処方箋の件ですよね?」

『えっ・?』


さっきまであんなに大きく瞳が揺れていた美咲さんなのに
落ち着いた声で発せられた問いかけに私は辺りをキョロキョロ見回してしまった。
ナオフミさんの姿を確認するために。
彼女はナオフミさんに問いかけているかと思ったから。


「事前に早川室長にお伝えしておいてよかったです。処方箋の症例の心理担当になって下さるんですよね?日詠・・・伶菜先生?」

軽く首を右側に傾けながら小さく微笑み、私の様子を伺った美咲さん。
いや、産科の美咲先生。


高梨さんと言いかけて
日詠先生と言い直した彼女
おそらく私の名札の氏名を見て言い直したんだろう

さっき彼女の瞳が大きく揺れたのも
おそらく私の氏名の変化に驚いたんだろう


3年前ナオフミさんのコトがスキと言った彼女に
こんな形で彼と結婚した現状を知られたり
日詠先生と呼ばれるのは
なんだか申し訳ないような気がした。

でも今、私の目の前にいる彼女からは
私の氏名の変化に瞬時に反応する適応能力の高さと
私のそんな申し訳なさを自然に消し去ってくれるようなさり気ない心配りができる優しさを感じた。

そんな彼女が私に与えてくれたチャンス
はっきり言って
臨床心理士としてちゃんと仕事ができるか自信がない

だけどこのチャンスに今、向き合わなきゃ
私はきっとこのまま立ち上がれない


だから

『・・・その件で、美咲先生のところにお伺いしました。』

私は背筋を伸ばしてちゃんと前を向いた。

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