ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


「じゃ、症例の経過を説明しますね。」

美咲先生はそう言いながら、外来患者用の電子カルテを開くためにパソコンの前に座った。
キーボードで手際よくカチャカチャと入力しながら画面を見つめる彼女の横顔は話しかけるのをためらうぐらい厳しいものに変化している。
多分難しい症例だと思った。


「初産後1ヶ月の30才女性。産後1ヶ月検診にてうつ徴候あり。1週間前に心療内科に対診依頼をかけたのですが。」

美咲先生はそう呟きながら、薬物処方履歴ページを開き、その症例の経過等を詳しく説明してくれた。

「なにかあったら、いつでも連絡下さい。対応しますから。」

その言葉で締めくくった美咲先生と私の間にあった “ナオフミさん” という壁は
もう “ない” に等しい感じがした。

この時の私はもう
自分のすべきことをやるしかないと今度こそ心に決めた。



でも臨床心理士という立場で美咲先生から託された症例と向き合う中で
自分がすべきことを忠実に取り組んだために気がついてしまった

今まで気がついていなかった
いや違う
気がついていないフリをしていた
大切なコトを

それが

ナオフミさんとのオトナな関係における戸惑いの
本当のイリグチだったということを・・・・


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