ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活



けれども俺達、医師や看護師が
救わなきゃいけない、ケアしなきゃいけない対象者は沢山いたりするわけで・・・

今、俺達が小柳さんの傍にいてあげられるのは
ほんの一瞬にすぎないんだ


「日詠先生。産科から病棟に至急戻ってきて欲しいと電話が・・・」

副師長が受話器を手で押さえながら申し訳なさそうにそう言った。


ほら、やっぱりそうなんだ
患者さんの想いにもできるだけ寄り添っていたい
けれども環境や時間の制約というものに
俺達はいつもといっていいほど阻まれていて


『小柳さん、すみません。産科から呼び出しがかかってしまいました。』

「いいんです。病棟、戻ります・・・。」


だけど本当のところ
それはただの言い訳に過ぎない

俺が今、こんなにも苦い想いをしているのは
忙しいから、人手が足りないことを言い訳にしながら
患者さんの想いに対して充分に耳を傾けきれていないことを・・・・

そして

患者さんに想いを打ち明けさせてあげるチャンスを
俺自身が上手く作ってあげられていないことを・・・・

自分自身でもはっきり感じているからだろう


それだけじゃない
忙しさとか人手不足とかのせいにしていたのは
俺と伶菜のプライベートな時間だってそうだ

伶菜とお互いの肌を触れ合っている時間でさえも
“産科病棟からの緊急コールが入った”
“研修医だけでは対応ができないらしい”

そんな言い訳をしていて・・・・
俺達は未だにふたりがひとつになるまでに至っていない


いつだって
伶菜が愛しくて
欲しくてたまらないのに



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