月 ~かぐや姫~
さぁ、と風が木々の間を抜ける。

私の髪の毛を掬っては、
微かに聞こえる波の音と舞い踊る。

久しぶりにやって来た場所は、
変わらず私を優しい光で受け止めてくれることに感謝しながら地面に腰を下ろした。


浜辺近くの竹林。

大きくも小さくも無いこの林の中に、
小さな泉が在る事を知る者は意外に少ない。

小さいといってもうっかり人が落ちてしまえば
溺れ死んでしまうほどの深さも広さも兼ね備えたその泉は今宵も静かに、
竹林に守られていた。



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