月 ~かぐや姫~
幼い頃、私はどうして自分が表へ出てはいけないのかがわからなかった。

おじい様もおばあ様も、
私に高価で上質な衣装を着せ、
絵巻物や人形など、女の子が欲しがるものは何だって与えてくれた。




たったひとつを除いて・・・








「そうら、新しい織物が届きましたよ。
今都でも流行している柄だとか・・・」

もう私は年だから流行にはとんとついていけていないが、
綺麗なこと・・・

と顔を綻ばせるおばあ様に、
私はその日何度目かになる質問をはなった。


「ねぇ、なぜ私は表に出てはいけないの。」

あんなに楽しそうな声がたくさん聞こえるのに。

頬を膨らませた私に、おばあ様は優しく微笑んだ。

「貴族の姫君は滅多なことで人前に出るものではないのですよ。
いつの日にか現れる殿方を夢見て、
こうして誰の目にも触れること無く、
美しく成長してゆくものなのですよ・・・」


まだ幼いあなたにはわからないでしょうね・・・。
 
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