お前は、俺のもの。


会社から最寄りの駅の近くにある、居酒屋「風鈴」。
以前に後輩の綾乃と一緒に訪れて、互いの愚痴をこぼしたことのあるお店だ。ここのタレのやきとりは、私の好物だ。

「一ノ瀬課長、今日はありがとうございました。お疲れ様でした」

夜とはいえ、会社からお店まで約五分の道のりは暑くて、じんわりと汗が滲んだ。
早く喉を潤したいために、ビールのジョッキを自分から課長のジョッキにコツンと当てて、口の中へ流し込んだ。
鬼課長はそんな様子を見ていたのか、「酒、強いのか」と聞いてきた。
ジョッキをテーブルに置いたと同時に「ハァ」と息をついた私は、首を横に振って、
「強くありません」
と、答えた。

「嗜む程度です。飲めるんですが酔いが回るのが早いみたいで、外で飲むのは二杯までと決めています。いつもは自宅で父と晩酌して適当に寝ちゃってます」
と、私のお酒事情を明かして、届いた枝豆をつまんだ。
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