お前は、俺のもの。

きのことほうれん草とベーコンのバター醤油のパスタは、二人で大盛りにしていただいた。香ばしい匂いが食欲を掻き立て、本当に美味しかった。


ああ、マジで美味しい。
毎日こんなご飯を食べているなんて、一ノ瀬課長は本当に料理上手ですね。羨ましい限りです。
あ、やっぱりこのことは会社で言わない方がいいですかね?
今まで市村係長に隠れて目立ってないですけど、一ノ瀬課長はイケメンで女の子たちに人気があるんですよ。だって実際に一ノ瀬課長に告白している女の子を見かけましたし。
それなのに仕事がデキる上に料理までデキるなんて知れたら、一ノ瀬課長の株がグンッと上がって、毎日女の子たちが営業部に押しかけてきちゃいますよね。あ、もしかしたら、川添さんも来ちゃうかもですよ?
でも私個人としては、嬉しいですけど複雑でもあるんです。
だって、そうじゃないですか。
サポートしている上司はすれ違う女の子を振り返らす威力を発揮するイケメン。社長の御曹司であることに驕らず何時でも自分に厳しく、常に冷静で要領が良く、私たちと同じ目線で物事に対応する姿勢が「ザ・完璧な男」を作り上げているんです。
それは私も上司として百パーセント尊敬に値しますし、見習いたい部分も沢山あります。
でも、一方で仕事から離れた一ノ瀬課長は、あ…甘い、というか。わ、私の思い過ごしや勘違いかもしれませんが、私にとってはこの上なく可愛がってくれている気がして「こんな干物女なのに」と思いながらも、一ノ瀬課長と釣り合っていないけど一緒にいれることが嬉しくて。いえ、嬉しいんです。
例え三ヶ月の上司だとしても私のことを信じてくれると言ってくれたし、見た目がこんな私なのにたくさん食べさせてくれるし。
私、「一ノ瀬課長は怖い人だ」というイメージが強くて、いつもは「鬼課長」なんて心の中で言っちゃってますが、今では一ノ瀬課長をもっと知りたいと思いました。
もちろん、一ノ瀬課長の料理もたくさん食べたいです。

ああ、美味しくて幸せです。

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