お前は、俺のもの。
鬼課長の口が開く。
「実家から通っているのか」
「はい。両親に言わせれば「自炊できないお前が独り暮らし出来るわけがない」と。だから実家にいるうちにお金を貯めて、結婚する人を見つけて早く嫁いで欲しいと言われてます。うち、妹がいるんですが、先に私を嫁に出したいらしいんです」
鬼課長相手に何を話しているのか、と思いながら、無言でいるよりは話をする方がお酒も美味しいと思った。
「お前は、料理はしないのか」
彼の質問に、私は「あはは」と笑った。
「私を見てわかると思うんですが、食べることは大好きなんです。でも料理というのは、どうも苦手分野のようです…」
お世辞にも「痩せている」と言えない、ぽっちゃりな私。
「自分の体型を気にするなら、食べた分を運動して消費すればいい」
「運動」という言葉に、ピクリと指先が反応した。
自覚した自分の固まった顔を、すぐに笑顔にする。
「私、ダイエット難民なんです。ダイエットグッズなんて私の部屋に山とあるのに、長続きしないんです。私、きっと意思が弱いんです。あははっ」
私はそう言って、ビールをグビグビ飲んでいく。そして、タレのたっぷりのやきとりをパクリと食べた。
「おいしー!ほら、課長もあたたかいうちに食べましょう」
私は盛り合わせのやきとりを、たくさん食べた。