お前は、俺のもの。

満島 凪。

この女を初めて見たのは、三年前に一ノ瀬リビングに入社した時から数ヶ月が過ぎた頃だった。
大学を卒業して自分で決めた建築設計事務所に入社して働いていた俺は、親父から「新しい部署を作るから戻ってこい」と説得され、渋々親父の会社へ転職した。

与えられた部署で、昼夜問わず部署の基礎作りに没頭して会社で寝泊まりする日もあった。自社製品を取り入れた空間デザインをプロデュースする部署、それが営業企画課だった。責任者は、今は部長となった加瀬課長だ。
とにかく親父と接する機会を避けた。もちろん親父に後ろ指さされないために、俺を見かけた女性社員たちの誘いも断り続けた。


その後、春川専務の秘書の川添穂香と恋人関係になった。
別に愛し合っていたわけじゃない。
春川専務の世話焼きに付き合い、一度きりのつもりで川添穂香と食事をした。彼女は俺と同い年で仕事もデキるらしい。軽く巻いたセミロングの髪に化粧映えする整った顔立ち、スラリとした細身の体型。
連れて歩くには申し分ない女。それだけの女は今まで何人も見てきた。