お前は、俺のもの。

手土産を手配した担当者がお店に再度用意できないか問い合わせてみたが、どうやら断られたらしい。
離れたところで見ていた俺も、万が一に備えて知り合いの店の店長にお菓子の手配が出来ないか聞くつもりでいた。
危機感漂う空気の中で、事務服の女は箱を拾い上げて担当者の男を見上げた。
「その手土産、和菓子じゃないとダメですか」


新商品「SAKURA」のセレモニーは無事に終わり、お客様に手土産が渡されていく。

「FUFU」の桜風味のロールケーキ(予算の都合上ハーフサイズだ)は、女性たちに好評で喜んで手にして帰っていった。

『 FUFUの洋菓子店が四月上旬まで桜フェアをやってるんです。いつもよりたくさんお菓子を作っていると思うので、ダメもとで連絡してみましょうか』

お店に頼み込めば「引取りに来てくれるなら用意できる」と言ってくれたおかげで、セレモニーのトラブルが回避できた。

一ノ瀬リビングがその後、「FUFU」のお菓子を手土産に持参することになったのは、この一件が始まりである。

そして俺は、この事務服の女に興味が湧いた。

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