お前は、俺のもの。

だが、そんな態度も想定内だ。
「そうですね。それでどうでしたか?俺の「彼女」になってみた感想は?」
川添穂香は数秒間、マンゴーのデザートを見つめて、
「そうね…楽しいわよ」
と言った。その語尾は声が沈んで小さくなっていた。
それはそうだ。彼女を喜ばせたのは妄想上の俺であって、現実の俺は何もしていないのだから。

「本当に?俺はあなたに何もしていなかったのに?」
「…何が言いたいの?」
眉を潜めて聞き返す女。

思わずフッと笑ってしまう。
「そう。俺は何もしなかった。そして、あなたも俺に何もしなかった。だけどあなたは俺の彼女で楽しい、と言った。でも俺は…」

少しずつ顔が険しくなっていく彼女に初めて感情を持ち、「かわいそう」と思った気がした。

「俺はあなたが彼女で、残念でした」

思いっきり顔を歪ませた川添穂香は、あの日ベッドの上でわざとらしく泣いた顔より、全然人間らしいと思った。
人間らしい、というか、本性というべきか。
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