お前は、俺のもの。

「ここで大声をあげるのは良くありません。冷静に聞いていただきたい」
と言いながら、俺自身にも冷静になれ、と言い聞かす。
俺が「川添穂香」という籠から出る瞬間なのだ。

「あなたが俺の「彼女」という立場になって、何か変化があるだろうかと見てきましたが…何も変わらなかった」
「それは、あなただって同じでしょ」
と、少し声を潜めながらヒステリック気味な川添穂香。
俺は頷いた。
「今まで付き合ってきた女性たちは、「彼女」となった俺のために自分を磨き、俺の都合もお構い無しにしつこく「会いたい」と連絡してきた。でもあなたの場合は「彼女」のポジションを得たというのに今以上に自分を磨くことも、強引に会うこともしてこなかった」

俺は、じっと見つめてくる彼女の顔色が変わっていくことに気づく。

「俺は思ったんです。あなたの望みは、女たちの手に入らなかった「俺の彼女」になることで、「自分は勝ち組」という自己満足を得ることだったんじゃないか…と。元々、俺を好きで付き合ってデートしたり、という気持ちはなかったですよね?」

目に映るのは、真っ青な顔をして両目を吊り上げて唇を噛み締める、川添穂香だけだ。
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