お前は、俺のもの。
「ふざっけるなっっ!!!」
自分の奥底から噴き出す怒りが、爆発した。
「親父、あの女がどんな人か知ってるのか?あんな女と結婚してみろ、俺は世間のいい笑いものになるぞ。それでもいいのかっ!」
「……」
暫く黙り込む親父に、「親父」と呼ぶ。
その声は、自分より声音が低く耳に響いた。
「…あの令嬢は相手にも、うちにも利益を生む。取り消しはない。お前がいつかこの会社を継ぐことになれば、あの令嬢のおかげで会社が潰れずに済むと思えば、結婚くらい安いものだろう」
本当に、俺の親父なのか。
「俺の結婚の価値を勝手に決めるなっ!俺の将来が会社に左右されるくらいなら、いつでも会社を辞めてやるよ。そうすれば、あの女が俺の嫁になる意味もないっ!!」
怒りに任せて怒鳴った俺は、荒々しく受話器を叩き戻した。
ふと、視線を感じた。
体を縮ませて怖がる満島 凪と視線が絡まる。
彼女に怖い思いをさせてしまった。俺は頭を冷やそうと、事務所を出た。
あんなことがあったせいなのか、俺の脳内は、満島 凪でいっぱいだった。
惚れた、と認めるしかなかった。